研究課題/領域番号 |
16201014
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952)
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研究分担者 |
岩田 久人 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10271652)
梶原 夏子 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助手 (80363266)
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キーワード | 臭素系難燃剤 / PBDEs / アジア・太平洋地域 / 広域汚染 / 環境動態 / 生物濃縮 / 野生生物 / 生態リスク |
研究概要 |
本研究の目的は、PBDEs(ポリ臭素化ジフェニールエーテル)による環境および野生生物の汚染実態と広がり、生物濃縮の特徴、リスク評価等について究明することにある。平成17年度は、生物環境試料バンクに冷凍保存されている海棲哺乳動物の臓器・組織試料を供試して、PBDEs汚染の過去を復元し将来を予測する研究を展開し、以下のような成果が得られた。 北部北太平洋を回遊しているキタオットセイの乳腺試料を供試して1970年以降の汚染を復元したところ、PCBsやDDTsなど有機塩素化合物の濃度は70年代をピークに減少傾向を示したが、PBDEsについては70年代以降明瞭な濃度上昇が認められ、90年代中盤に最大値を示したのちやや低減傾向がみられた。また、1982年および2001年に日本の沿岸に集団座礁したカズハゴンドウの脂皮を分析したところ、既存の有機塩素化合物は後者の試料の方が有意に低濃度を示したのに対し、PBDEsは前者に比べ後者で10倍高い濃度が検出された。さらに東シナ海の中国沿岸で捕獲された沿岸性鯨類スナメリの脂皮試料も2000/01年の検体は1990年の検体に比べ明らかに高い濃度レベルを示した。 これらの結果より、PBDEsによる海洋汚染は近年急速に進行し、この傾向は今後しばらく継続することが推察された。とくに、中国沿岸のスナメリは極めて高い濃度のPBDEsを蓄積しており、経済成長の著しい途上国で急増している電気・電子機器の生産と廃棄の現状が、この物質の海洋汚染の進行に大きな影響を及ぼしているものと考えられた。
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