研究課題
基盤研究(A)
本研究課題では、自由クラスターの電気伝導特性を非接触法により測定するための検出手法及び検出装置を開発し、その手法を適用するのに適した、三層構造からなる合金クラスターを作成可能な新規クラスター作製装置の開発を行った。電気伝導特性測定は、X線照射によって生成するすべてのイオンの質量電荷比と運動最を計測可能な多重同期計測システムを製作し行った。希ガス混合系としては、クラスター中に原子数比で1%のクリプトン原子を含むアルゴン-クリプトン混合クラスターを作製し、クリプトンのK吸収端近傍のX線を照射してクラスターをイオン化した。生成した電子とイオンの同期計測を行うことで、クリプトン原子のX線吸収によって生成したイオンの分布と運動エネルギーを得た。実験結果から、アル:ゴン-クリプトン混合クラスターにおいては、クリプトン原子上で生成した電荷はクラスター中で比較的局在しており、高々第2隣接原子程度まで広がった後、クーロン爆発によって解離子イオンが生成していることが明らかとなった。また、得られたイオンの分布からは、クリプトン原子周辺にはアルゴン原子が配位しやすい傾向が明らかとなった。このような結果から、本研究で開発した装置や解析手法で真空中に孤立した単一クラスターの電気伝導特性の計測が可能であるとともに、相分離傾向の探索も可能であることが明らかとなった。さらに新規に開発した分子ビーム生成装置を用い、分子ワイヤとして応用が期待されるπ共役電子を有する有機分子、特にビフェニル系化合物の実験を行った。特に臭化ビフェニルと臭化フェノールそれぞれで、臭素原子でX線吸収を起こし、解離イオンの分析を行ったところ、分子長に伴う伝導特性の変化を強く示唆する結果を得た。以上により、本研究で開発を行っている非接触式の電気伝導特性計測手法は、クラスターにとどまらず単一分子の計測にも適用できる事を強く示唆する結果を得た。
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