研究概要 |
本研究の目的は,ナノ構造中で新たに発現する単電子効果および量子効果を積極的に利用し室温で動作するシリコン新機能デバイスと,既存のCMOSデバイスを融合させた新しい概念の集積回路を実現することである.本研究の主な特徴は,ナノ構造中の物理やデバイス物理だけでなく回路技術まで考慮して集積化を目指す点,室温動作を目指す点,および実際に回路を試作して新概念の優位性を実証しようとする点である.本年度は,室温で動作する単電子トランジスタの集積化に取り組んだ.単電子トランジスタはこれまで作製プロセスが未熟であったため,複数のデバイスを1チップ上に集積することは不可能であったが,本研究ではプロセス技術を徹底的に洗い直して極めて微細はシリコンドットを精度よく作製するプロセスを開発し,初めて集積化に成功し,室温で電流スイッチ動作を実現した.さらに,クーロンブロッケード振動のピーク位置を制御することのできる室温動作単電子トランジスタ3個と電流値の制御するMOSトランジスタを1チップ上に集積し,アナログパターンマッチング回路を構成し,その動作を室温において実証することにも成功した.これらの成果は,完全室温動作シリコン単電子・量子・CMOS融合集積回路の実現の可能性を飛躍的に向上させる重要な成果である.
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