研究概要 |
生体分子間相互作用の高感度な測定法として表面プラズモン共鳴センサーが広く用いられている.しかし,従来の表面プラズモン共鳴技術では,計測システムに精巧で複雑な光学系などが必要であったり,センサーチップの製作に高いコストが掛かるなどの問題点があった.そこで,これらの問題点を克服するために,光導波路技術や局在表面プラズモン共鳴を取り入れたセンシング技術の開発を行っている. 光導波路型表面プラズモン共鳴センサーとして,ポリマーを用いたセンサーチップの製作に成功した.ポリマーのクラッド層に光導波のためのコア形状(3μm×3μm×15mm)の金型を圧着することによって,コア形状の溝を持つクラッド基板を形成した.この溝に屈折率の高いポリマーを封入して,光導波路を組み込んだ.さらに,導波路の上に金薄膜を蒸着することにより,光導波路型表面プラズモンセンサーチップを製作した.このセンサーチップを使うことによって,溶媒の屈折率変化(Δn〜10^<-2>)を検出することに成功した. また,生体分子間相互作用計測への応用を狙い,局在表面プラズモンの共鳴条件を数値解析によって検討した.光学ガラス(SF-10)表面に銀ナノ粒子を周其目的に配置したモデル系において条件を検討した.その結果,直径60nmの銀ナノ粒子を120nm間隔で配置した場合が適当であるという結果を得た.この場合,純水に接している銀ナノ粒子固定化表面に入射角55°で光を入射すると,500nm付近に共鳴点があった.さらに,銀ナノ粒子固定化表面に厚さ70nm,屈折率1.45の誘電体層を置くと,数10%程度の反射率変化が出力として得られることが分かった.今後,このようなシミュレーションや局在表面プラズモン共鳴センサーの試作を通して,局在表面プラズモン共鳴による生体分子間相互作用センシングの技術開発を進めたい.
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