研究概要 |
生体分子間相互作用や媒質の屈折率などを解析する手法として,導波路型表面プラズモン共鳴センサが,光学機能の集積化による小型化が可能であることから注目されている.しかし,主にガラスを材料として用いるため,このセンサチップの作製プロセスは複雑でスループットが低く,高価であり,さらに設計自由度が低いため感度領域の調整を行うことが困難であった,本研究では,今年度,ポリマー材料のセンサチップを用いることで,作製のハイスループット化の達成と感度領域が調整可能であることの実証を行った.詳細を下記に示す. センサチップは次の工程で作製した.(1)露光装置等を用いてパターンを描画し原盤を作製,(2)電鋳技術を用いて原盤と反転パターンを有する金属金型を作製,(3)金型を用いてポリマー樹脂に転写しクラッド構造を作製,(4)クラッド上にコアとなる屈折率が異なるポリマー樹脂を塗布した後,硬化させてコア層を形成,(5)樹脂やガラスなどで基板を封止,(6)最後にセンサ部分を研磨してコア層を剥きだしにする.転写工程では1枚のセンサチップが複数配置されたウェハを数分で作製することができる.スループットは,装置能力やチップの取り数によって変動するが、10K/M以上のハイスループット化が可能となる.さらに,我々は,導波路のコアとクラッドの屈折率を変化させた2種のチップを作製した.このチップによるシミュレーションと実験結果のセンサ出力特性はよく一致している.そして,屈折率分解能は約5.0×10^-3〜3.2×10^-4[RIU(refractive index unit)]で,noise fluctuationは平均約6.0%であった.また,試料の屈折率に応じてポリマー材料を選択することによって,感度領域が容易に調整可能であることも実証している.さらに,我々はこのチップを用いて,溶液中の生体分子(Fibrinogen)の検出にも成功している.
|