研究課題
海産毒に多く見られるポリ環状エーテル構造とその作用標的生体分子と想定される膜タンパク質との分子認識機構の解明を目的とした本研究の骨子は、(1)同位体など構造情報取得の手掛りが導入可能な有機合成によるリガンド分子の調達、および(2)脂質二重膜内での複合体に関する構造情報取得のための方法論の開発、の二つである。(1)に関して、本研究室で確立したin situヒドロホウ素化/鈴木クロスカップリングによる6員環構築を介したポリ環状エーテルの収束的合成法を、同様の方法論により7員環および8員環の構築を介した連結法の開発に拡張できた。これにより同じ部品より異なる員環数を間に持つポリ環状エーテルの調製が可能となった。(2)に関しては、本研究室にて全合成により調達した微量海産ポリ環状エーテルであるガンビエロールから、そのマウス致死毒性を維持した修飾体を用いた神経細胞膜画分との光親和性標識を試みた。この結果、天然物の添加により阻害されない多くの非特異的標識タンパク質の中から、阻害を受ける特異的標識タンパク質を二次元電気泳動により見出すことができた。こうしたタンパク質が一般的に微量成分であることで本分野の研究の障害になっていることより、これに対処すべく質量分析を用いたタンパク質同定法の確立を進めており、その成果を得ている。本研究は縮環型ポリ環状エーテルの炭素3つを介したエーテル酸素と膜結合タンパク質アルファ螺旋構造との特異的親和性を作業仮説として進めているが、これを検証すべくタンパク質膜貫通部位のモデルペプチドを化学合成し、同様に合成したポリ環状エーテルのモデルであるポリプロピレングリコールと対照としてのポリエチレングリコールとの親和性を螺旋構造の安定性を指標に検証した結果、前者に特異的な親和性が見られた。これにより本研究の作業仮説が支持された。
すべて 2006 2005
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