研究概要 |
天然神経毒の構造には、生体内リガンドの活性配座(水素供与基と水素受容基)に対応した極性官能基が適切な空間に配置されている。これらの官能基は神経受容体やイオンチャネルとイオン結合や水素結合を介して結合する。本研究では、天然興神経毒の全合成と、その水素供与基の空間配置に着目した構造単純化分子の合成により、高活性神経リガンドの開発を目指した。その結果、オリジナルに開発した不斉ストレッカー合成を鍵反応とした合成戦略のもとに、天然起源としては初めてのグルタミン酸受容体アンタゴニスト、カイトセファリン、及びナトリウムイオンチャネル阻害剤であるフグ毒テトロドキシン同族体、5,6,11・トリデオキシテトロドトキシンの全合成に成功した。カイトセファリンの合成研究では、C7,9位の立体異性体も含め計4種を合成し、活性相関研究により活性発現に関する有用な知見を得た。また、テトロドキシンやその同族体では初めての例である^<13>Cラベル化5,6,11・トリデオキシテトロドトキシンが合成できた。イオンチャネル遮断機構やテトロドトキシンの生合成機構解明のための研究ツール分子として期待がもたれている。さらに、スクアリン酸(四角酸)をカルボン酸等価体として用いることにより、数種のスクアリン酸含有グルタミン酸類縁体に導いた。特に、硫黄連結型類縁体はグルタミン酸受容体のうちカイニン酸サブタイプ受容体に選択的な結合活性を示し、官能基制御の有用性が実証できた。
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