研究課題
基盤研究(A)
研究代表者の加藤尚武は、ヘーゲルの「絶対者」という概念がスピノザの実体概念に強く影響を受けており、その絶対者の自己認識に参入する精神の形式のひとつが芸術であるという芸術観が、ヘーゲル美学の原型であることを明らかにした。分担者の栗原は、先行する思想を解釈する際に、「精神」に依拠するのか、それとも「文字」面を重視するのかをめぐって、ドイツ観念論の中で繰り広げられた論争から、精神こそが真理を過去において表現していた媒体を捉えることができるという認識に、芸術の哲学が芸術を解釈する以上、芸術は常に終焉していなければならなかったという発想の原点があることを明らかにした。分担者の伊坂は、(1)ヘルダーの風土と神話の概念を手がかりにして、自然風土の中で育まれる民族の神話が芸術の基盤になっていること、(2)シェリングの同一哲学と芸術哲学を手がかりにして、ロマン主義芸術が一面で古代ギリシアの古典主義を踏まえながらも、近代的な主観性と内面的な感情を表現するものであることを明らかにした。分担者の松田は、一つのパラダイムが終焉する時に新たな歴史が始まるという枠組みの中で、新たな歴史の内実の一つの例を先端医療に求めるとともに、技術の進歩という概念が、技芸にも当てはまるかを考察した。分担者の山内は、西欧中世におけるars概念(技術ないし芸術)を、(1)12世紀と13世紀におけるartesliberals(自由学芸)をめぐるさまざまな運動におけるars概念の変遷と、(2)13世紀における神学と哲学との関係をめぐる神学部と学芸学部における諸論争におけるars概念を分析することで、近世に到って顕在化する「芸術」概念の中世的な展開を明らかにした。分担者の城戸は、芸術終焉論の問題機制の前提となるカント美学の研究を担う。カントの『判断力批判』を、18世紀哲学の文脈のなかで読み解き、ドイツ観念論との関連を吟味する作業を進めている。また、『知識の社会史』の邦訳によって、近代におけるars概念の変遷についても知見を深めた。分担者それぞれが、それぞれの方法と切り口からヘーゲル美学の基礎範疇の解明に向かってきた今、ヘーゲルの「美学講義」に依存しない、精神哲学の文脈で「芸術終焉論」を解明しなくてはならないことが明らかになるとともに、現代芸術のなかに「芸術終焉」が含意されていながらも、作品であることまでは否定されていないように、時代が「仕事(Werk)」という概念に与えている多様な意味を探ることを次の課題として自覚するようになってきた。
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新潟大学人文学部『人文科学研究』 116輯
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理想 第674号
ページ: 41-50
科研費報告書
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平成16年度環境対応技術開発等(バイオ事業化に伴う生命倫理問題等に関する)報告書(財団法人バイオインダストリー協会)
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神奈川大学評論 第47号
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静岡大学人文学部『人文論集』 55-1
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21世紀フォーラム(財団法人政策科学研究所) No.96
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現代思想 9月号
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ヨーロッパ研究 第4号
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思想(岩波書店) 第966号
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