研究課題/領域番号 |
16202016
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
海老澤 衷 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60194015)
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研究分担者 |
堀口 健治 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80041705)
岡内 三眞 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90093210)
新川 登亀男 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50094066)
高橋 龍三郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80163301)
久保 健一郎 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (60257235)
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キーワード | 桂川 / アユン川 / ジャテルイ / 葛野大堰 / 東寺 / 上桂荘 / 水利社会 / ローカルライス |
研究概要 |
本年度においては、主に(1)京都近郊桂川の調査、(2)バリ島におけるアユン川およびジャテルイの調査が上げられる。このうち、(1)については、(1)東寺百合文書などの古文書調査、(2)現地調査による葛野大堰などの古代から現代に至る実態調査、(3)委託による空中写真に基づくデジタル画像の作成などを進めた。(1)は東寺領上桂荘に関して、大学院海老澤ゼミにて上島有編『山城国上桂史料』上・中・下と東寺百合文書写真により精確な資料調査を行い、多くの知見を得た。(2)は中世の桂川用水差図や山城国松尾社境内絵図などにより、京大名誉教授大山喬平氏の助力を得て現地調査を行い、成果を得た。(3)は1970年代の正射投影写真を3次元ビュァーで地形表現ができるよう3次元モデリングを構築したものであり、これにより(1)及び(2)の調査を現代の状況に立体的に反映して考察することができた。(2)では、三浦恵子氏による「バリ島3地域における「水稲文化と儀礼」の比較研究」、河合徳枝氏の「報酬主導による持続型社会モデル」、細谷葵氏の「コメと倉-バリ島稲作社会の民族考古学調査-」、菊地有希子氏の「バリ島におけるローカルライスの特徴について」など、いずれも現地調査による成果を得た。 以上(1)と(2)により日本およびバリ島における水利社会の歴史的実態の解明が進んだと言えよう。過去3年間の研究蓄積により、日本及びバリ島という前近代において水田農耕を基盤として成立した国家の下部構造に関して多くの事実を明らかにすることができた。今年度はムラの水利に関する従来の研究をより精緻化すると同時に、国家による水利を展望する時期に当たり、平安京と密接に関わる桂川の水利などからその輪郭をを浮かび上がらせることに成功した。東アジア水利社会の全体的な構造解明に向けて大きく前進したと言える。これらを踏まえて報告書『東アジア村落における水稲文化の儀礼と景観』を刊行。
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