研究課題/領域番号 |
16203005
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
村岡 啓一 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40345442)
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研究分担者 |
後藤 昭 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00143256)
大出 良知 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (50115440)
高田 昭正 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50116472)
川崎 英明 関西学院大学, 大学院・司法研究科, 教授 (30127485)
白取 祐司 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10171050)
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キーワード | 刑事弁護人 / 接見交通権 / 外部交通権 / 接見禁止決定 / 弁護士倫理 / 弁護士業務基本規程 / 秘匿特権 / 懲戒請求 |
研究概要 |
16年度のプロジェクト全体の研究テーマは「接見交通をめぐる弁護人の行為規範と倫理問題」であった。 検討素材として、弁護人と身体を拘束された被疑者との接見交通において、弁護人による第三者への通信の仲介行為が裁判所の下した一般人と被疑者との間の接見禁止決定を潜脱するとの理由で、検察官によってなされた当該弁護人に対する懲戒請求事案2件を取り上げ、接見交通権の濫用と主張する検察官と接見交通権の当然の行使と主張する弁護人の対立の根底にある刑事弁護人の役割についての認識の違いに焦点をあてた。また、ドイツを訪問して、ドイツにおける刑事弁護人の法的地位をめぐる議論状況と実際につき、関係諸機関及び各弁護士会の第一人者から最新の情報を得た。その結果、以下の知見を得た。 1、懲戒請求事案の背景には、裁判所の接見禁止決定が安易になされているため、弁護人が一般人の外部交通を担わなければならないというわが国特有の事情がある。 2、依頼者-弁護人間の秘匿特権に対する検察官の認識が薄く、接見内容を聴取することが接見交通権の侵害と認識されていない。 3、弁護人の地位を検察官は司法機関と見るのに対し、弁護士は依頼者の代理人と見ている弁護人観の違いがある。 4、第三者への通信の仲介はドイツでは秩序罰の対象となる点で行為規範があるが、わが国では明確な行為規範がないので犯罪等への関与という認識がない限り弁護士の専門家裁量に委ねられる。 5、日弁連の弁護士業務基本規程も明確な行為規範を示していないので、懲戒の成否は、弁護人の役割をどう理解するか、接見交通権の中に外部交通権をも取り込んで理解できるかに依存することとなる。
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