本年度の研究目的は、EUにおける経済統合と法制調和の動向を研究するとともに、中国および韓国における経済法・企業法分野における法制調和の動向を調査研究することであった。 EUについては、会社法および経済法に関してEU委員会において調査を行うとともに、東欧諸国における法制調和の研究を実施した。東欧諸国における会社法整備に関しては、ポーランド・チェコ・ハンガリー等のように第二次世界大戦前に商法が導入され市場経済について経験のある国と、ブルガリやルーマニアなどのようにこのような経験のない国において全く異なる状況が存在することが判明した。すなわち、前者については、外国からの支援を受けることよりも、自国の判断で会社法整備が行われた。一部の国では、ドイツ法の規定・判例をそのまま継受することも行われたが、ドイツ法の複雑な規定は継受国に適しておらず、改正が行われたケースもある。 他方、ブルガリアなどの市場経済を経験したことのない新加盟国においては、EU指令の存在すら知られておらず、指令の翻訳から開始した。指令の翻訳後に、対応が必要な部分と必要ではない部分についての比較対照表が作られ、この表に基づいて会社法制定作業が行われた。 中国に関しては、会社法および独占禁止法の改正作業について研究・調査を行った。会社法改正は、2004年7月から国務院法制弁公室における草案作成が本格化しており、JICAの経済法・企業法整備プロジェクトも同年11月18日に調印された。布井は国務院法制弁公室主宰の国際セミナーに参加するなど、日本の会社法に関する知見が中国の立法に反映される現場を身をもつて体験した。 中国の独占禁止法制定に関しては、草案作成段階を経て全人代における審議が継続中であるが、行政独占の問題と独禁法所轄官庁の調整問題が解決できず、審議が中断している。
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