研究概要 |
本研究では、現代の地域社会における健やかな子育ちの基盤づくりに貢献すべく、胎児期からの認知行動発達科学的研究に着手し、科学的な発達理解を踏まえた支援の方法論を探求した。今年度は、縦断研究の3年目として、研究拠点「子育ち応援ラボうみかぜ」を中心に活動し、胎児期から出生後2歳ごろまでのヒトの母子コミュニケーションにかかわる以下の研究を実施した。1)胎児期については,4次元超音波画像診断装置を使用した行動観察を実施し、手指が口に接触する直前に口を開ける「予期的指すい」を,胎内ですでにおこなうことを明らかにした。さらに、胎外からの聴覚的刺激に対する胎児の反応を分析し、口開け行動の生起頻度が、母親声や機械音に対しては増加することを明らかにした。他方、母親以外の声に対しては変化がみられず、聴覚刺激について、ヒトは出生以前から刺激の特性により異なる反応をしている可能性が示唆された。2)出生後については,新生児期から継続して発達検査を実施した。併せて実施した母親への面接調査から、子の能動性が高まる生後1〜2か月に、母親の負担感がピークとなり、その後4か月にかけて一旦収束していくことが示唆された。また、母子の食事場面や物遊び場面について実験的観察を実施した。これらを通じて,3)子は,離乳食開始前後から,新奇なものであっても,食物と非食物を分化させて認知しているにもかかわらず、食物を非食物のように扱って,遊び食べをし,そこに母子の葛藤が生じること、4)積木や描画場面において,大人の見本や社会的指示がある場合に生じる調整行動が発達的に変化することを明らかにした。さらに、子育てサークルの設営を通じて、0〜2歳期の子が、複数の母子の共同活動のなかで示す遊びの発達的変化と母親の育児意識の変化を調査し、母親への支援にあり方を検討した。
|