研究課題
本年度は、内側前頭前野に位置する前部帯状回(anterior cingulate cortex: ACC)が背外側前頭前野(dorsolateral prefrontal cortex)および腹外側前頭前野(ventrolateral prefrontal cortex)と連携してワーキングメモリの認知的制御を担っていることが判明した。上部頭頂小葉(superior parietal lobule: SPL)もこれにかかわることも明らかにすることができた。高齢者のワーキングメモリの脳機能を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で大学生などの健常成人と比較すると、高齢者ではACCの活性化が減衰することやSPLの活性化が認められることが明らかになり、SPLがACCなどの機能低下を補っていると推定された。リーディングスパンテストによる言語性ワーキングメモリ得点の低下の要因として、抑制機能の衰えが考えられた。一方、高齢者でもイメージ化方略を使うように訓練することで得点の上昇とSPLの活性化が認められ、ワーキングメモリ機能の強化に有効な方法であることがわかった。また、高齢者でもワーキングメモリ課題下でのSPLの活性量に脳の左右半球差が認められることが明らかになったが、これは高齢者のワーキングメモリ機能の低下を補完しているものと考えられる。また、ワーキングメモリのかかわりを心の理論などの他者の心の状態の推定課題で評価した結果、この領域がACCやBA9とかかわりあいながら辺縁系とも相互作用をもちながら複雑な内的課題(例えば他者や自己の認識)を処理している社会脳領域であることが示された。以上の結果は、ワーキングメモリの注意制御系としての中央実行系が背外側や腹外側の前頭前野のみならず、内側前頭前野の制御にもかかわることを示唆したものである。
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心理学評論 50
ページ: 216-226
Neuroscience Letters 418
ページ: 232-235