コバルト酸化物の電子状態制御と新規超伝導研究

2005 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16204025
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 佐藤 正俊 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40092225)
• 研究分担者: 小林 義明 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 講師 (60262846) ; 安井 幸夫 名古屋大学, 大学院理学研究科, 助手 (80345850)
• キーワード: コバルト酸化物 / 超伝導 / 物質開発 / 核磁気共鳴 / 中性子散乱 / 強相関係

研究概要

水和物超伝導体Na_xCoO_2-yH_2O(y〜1.3)の超伝導発現機構の解明,Co酸化物のスピン転移に伴う劇的物性変化とその転移の制御、さらには高温超伝導体に残された問題の完全解明をめざし研究を進めた。
Na_xCoO_2-yH_2Oの研究では、超伝導が新規なものかどうかを知るために、その磁気フラストレーションやCoのスピン状態変化(軌道励起)の役割の解明をめざして、銅酸化物高温超伝導体に対する研究成果をガイドラインにして研究した。Na_xCoO_2-yH_2Oばかりでなく、母物質のNa_xCoO_2や他の強相関電子を持つ物質系をも対象に広い視野から物性研究を進めた。特にNa_<0.5>CoO_2が示す二つの相転移がどのような素性のものであるかについてNMRと中性子散乱による詳細なデータを発表し、これらの電子系の特徴を明らかにしたことは、他グループを含めた多くの研究・考察に極めて大きな影響を与えた。また、超伝導相Na_xCoO_2-yH_2Oの単結晶を用いたNMR研究は他ではなし得ていないもので、そこで確立された"ナイトシフトが結晶軸と磁場方向の関係によらず、超伝導の出現に伴って消失していく"という結果は、クーパー対がsinglet状態にあることを端的に示す。研究者間に広がる"クーパー対はtriplet状態にある"との主張を否定するもので大変重要である。大型単結晶を用いた中性子非弾性散乱で磁気励起が見られないことも、これまでの実験で明らかになりつつあるが、これは、超伝導発現機構に磁性が役割を持っていないことを示す。
銅酸化物高温超伝導体研究では、"ストライプ"という1次元的電荷秩序の動的揺らぎの出現が超伝導発現に対してどんな影響をもつかを最近調べてきたが,実際に"ストライプ"の静的秩序を持つ試料でのフォノン異常がどの見えるかについて結果を発表できるに至っている。

研究成果

• [雑誌論文] Magnetic Structure of YBaCO_4O_7 with Co-O Kagome-and Triangular Lattices (2006)
  • 著者名/発表者名: M.Soda et al.
  • 雑誌名: J.Phys.Soc.Jpn. 75No.5(in press)
• [雑誌論文] Electron-phonon Coupling Reflecting Dynamic Charge Inhomogeneity in Copper-Oxide Superconductors (2006)
  • 著者名/発表者名: D.Reznik et al.
  • 雑誌名: Nature (in press)
• [雑誌論文] Magnetic and Metal-Insulator Transitions in β-Na_<0.5>CoO_2 and γ-K_<0.5>CoO_2 -NMR and Neutron Diffraction Studies- (2006)
  • 著者名/発表者名: H.Watanabe et al.
  • 雑誌名: J.Phys.Soc.Jpn. 75No.3(in press)
• [雑誌論文] Photoemission Study of RBaCo_2O_<6-δ>(R=Tb,Nd,δ=0.5,1.0) (2006)
  • 著者名/発表者名: K.Takubo et al.
  • 雑誌名: Phys.Rev.B 73 ページ: 075105-(1-5)
• [雑誌論文] Optical investigations on Y_<2-x>Bi_xRu_2O_7 : Electronic Structure evolutions related to the Metal-Insulator Transition (2006)
  • 著者名/発表者名: J.S.Lee et al.
  • 雑誌名: Phys.Rev.B 72 ページ: 035124-(1-7)
• [雑誌論文] Evolution of the Electronic Structure across the Filling-Control-Metal-lnsulator Tansitions in Pyrochlore-Type Ru Oxides (2006)
  • 著者名/発表者名: J.Okamoto
  • 雑誌名: Phys.Rev.B 73 ページ: 035127-(1-6)
• [雑誌論文] Magnetic Correlation of Na_xCoO_2 and Successive Phase Transitions of Na_<0.5>CoO_2-NMR and Neutron Diffraction Studies- (2005)
  • 著者名/発表者名: M.Yokoi
  • 雑誌名: J.Phys.Soc.Jpn. 74No.11 ページ: 3046-3056
• [雑誌論文] Correlation between the Metal-Insulator Transition and the electronic density of States near the Fermi Level in Oxgen-Deficient Perovskite-Type NdBaCo_2O_<5.5>. (2005)
  • 著者名/発表者名: M.Hidaka
  • 雑誌名: phys.stat.Sol.(b) 242No.7 ページ: 1422-1430
• [雑誌論文] ^<59>Co-NMR Knight Shift of Superconducting Three-Layer Na_xCoO_2-yH_2O (2005)
  • 著者名/発表者名: H.Watanabe
  • 雑誌名: J.Phys.Soc.Jpn. 74No.9 ページ: 2563-2567
• [雑誌論文] Magnetic and Charge Ordering Transitions of PrBaCo_2O_5 (2005)
  • 著者名/発表者名: M.Soda
  • 雑誌名: J.phys.Soc.Jpn. 74No.6 ページ: 1875-1876
• [雑誌論文] On the mechanism of the Spin State Transition of(Pr_<1-y>Sm_y)_<1-x>Ca_xCoO_3 (2005)
  • 著者名/発表者名: T.Fujita
  • 雑誌名: J.Phys.Soc.Jpn. 74No.8 ページ: 2294-2300
• [雑誌論文] ^<59>Co-NMR Knight Shift of Aligned Crystals and Polycrystalline Samples of Superconducting Na_<0.3>CoO_<2->1.3H_2O (2005)
  • 著者名/発表者名: Y.Kobayashi
  • 雑誌名: J.Phys.Soc.Jpn. 74No.6 ページ: 1800-1805