昨年度までの研究により、超高真空蒸着システムの立ち上げが完了し、10^<-10>Torr台での高品質な薄膜作製が可能となった。これにより順調に各種の試料作成が進行している。これらの単結晶微小磁性体を使って、電子スピン共鳴測定、電流磁気効果などの輸送物性測定、高周波複素誘電率測定を液体ヘリウム温度から室温の温度範囲において行った。主な研究テーマとして次のような研究を行った。 (1)トポロジカルな磁気構造を持つナノ磁性体における磁気励起 (2)トポロジカルな磁気構造の外場による制御と量子伝導についての研究 (3)ナノ構造六角格子系における磁気フラストレーションとスピンアイス状態の研究 (4)反対称トポロジーをもつドット系とアンチドット格子系の相補的な磁化機構 (5)強磁性共鳴状態における高周波伝導機構の研究 得られた結果を、すでに開発したLLG方程式に基づくマイクロマグネティックスシミュレーションの方法によって計算した磁気構造の時間発展の結果と比較検討し、トポロジカルなスピン磁気構造によってもたらされるナノ磁性特有の磁気励起、磁気緩和機構およびトポロジカルな磁気欠陥の運動の様子を解明した。 最終年度であるので、3年間にわたる研究成果を集積し、総合論文として公刊する予定である。
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