2年目の年度として、初年度末に納入されたテラヘルツ時間領域分光法の装置(栃木ニコン社、特注品)について、その性能(テラヘルツ光の発生分布、時系列信号の再現性など)の詳細なチェックを行った。テラヘルツ分光法では液体測定法がまだ確立されていないために、液体測定用試料セルの開発を行った。理論的検討の結果液体セルには窓材が不可欠であるが、ビーム径が最長波長の数倍ある平行光束を測定に用いると、二つの異なる試料長の測定を続けて行いそれらの信号を処理することにより、窓材の複素誘電率とは独立に試料のみの複素誘電率を一意的に求める方法を見出すことができた。この方法を実現するためにテラヘルツ帯において吸収の少ない窓剤を選んでセルを試作し、特殊な加工をしたスペーサーを用いることによりテラヘルツ透過測定用の最適な液体セルの試作に成功した。次に、透過測定の標準的な液体試料として水、アセトン、一価アルコール、二価アルコールなどの高純度液体試料の測定を室温で行い、テラヘルツ周波数帯の複素誘電率の実部と虚部のスペクトルをきめ文献値との詳しい比較を行った。その結果、これらの液体については、複素誘電率の実部並びに虚部のスペクトルは従来法で調べた値に実験誤差の範囲内で一致していることを確認した。続いて、典型的な強いガラスである石英ガラス、ホウ酸ガラス、代表的な弱いガラス形成物質であるとともに生体凍結保護物質であるエチレングリコール水溶液についてテラヘルツ透過測定を行った。これらの測定結果については現在データ解析が進行している。
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