研究概要 |
今年度は3年目の最終年度である。過去2年間で新しい緻密な設計の基に特注品と製造されたテラヘルツ時間領域分光法の装置(栃木ニコン社)が導入され、さらにその性能(テラヘルツ光の発生分布、時系列信号の再現性、信号強度のダイナミックレンジなど)の詳細なチェックが行なうとともに、テラヘルツ光発生にボータイアンテナを用いることによる時間領域テラヘルツ分光測定0.1から1.0THzの範囲で(1)アルコール水溶液、(2)生体凍結保護物質、(3)酸化物ガラスについて行った。今年度は引き続きダイポールアンテナを用いてより高い周波数範囲(0.5-3.0THz)で上記3種の複雑液体について信頼性の高いテラヘルツ時間領域分光の測定を行った。その結果、1,2年目の低振動数領域のスペクトルと接続することにより、広い周波数範囲でテラヘルツ複素誘電率スペクトルの実部並びに虚部を決めることができた。また、テラヘルツ用のクライオスタットを試作して試料の温度依存性を低温から高温に至る広い温度範囲で調べることのできる時間領域テラヘルツ分光装置を構築した。これにより代表的なガラス形成物質、生体凍結保護物質について、低温から高温に至る広い温度範囲において液体状態、過冷却液体状態、ガラス状態におけるサブテラヘルツからテラヘルツ帯における主緩和、速いベータ過程、ボソンピークなどの普遍的なダイナミクスの研究が可能となった。テラヘルツ領域の異常緩和現象と振動励起状態を正しい理論モデルで解析するために、関連するさテラヘルツ帯の低振動数ラマン散乱、並びにサブテラヘルツ帯のブリルアン散乱測定も上記3種の複雑液体について詳しい研究を行い、選択則の相違等を利用したこれらのダイナミクスの解析できる環境を整えた。
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