研究分担者 |
和田 秀樹 国立大学法人静岡大学, 理学部, 教授 (20126791)
亀尾 浩司 国立大学法人千葉大学, 海洋バイオシステムセンター, 助手 (00312968)
北里 洋 独立行政法人海洋研究開発機構, 固体地球統合フロンティア研究システム, 領域長 (00115445)
中村 栄子 国立大学法人横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (10017733)
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研究概要 |
本年度の研究は以下の調査を行い,幾つかの重要な成果を上げることができた. ・横浜市の上総層群 1.化学合成貝化石の産出,および自生炭酸塩からなるコンクリーションの発達様式と炭素安定同位体比の解析から7回の湧水ステージを認めた.また,これらのステージに対応した炭酸塩鉱物の規則的な繰り返しが認められた. 2.湧水層準から有孔虫化石を抽出し,酸素の安定同位体比の測定と温暖種の比率を算出した.また,同層準からナンノ化石ステージ10,11,12を認定した.この結果,湧水層準の中部が同位体ステージ57から59に相当することが判明した. 3.1と2の結果から,少なくとも3回の湧水ステージは,温暖化に向う直前から温暖化期に活動的なことが判明した.この成果は陸棚のメタン放出が地球の環境変動に極めて重要な役割を果たしていることを示唆している. ・宮崎県の宮崎層群 1.化学合成化石群集の中心部および同層準の非湧水部から75mずつボーリングコア採取した.その結果,地表から72m地点で化学合成二枚貝を認めると共に,少なくとも3回の化学合成二枚貝と自生炭酸塩コンクリーションの繰り返しを認めた. 2.1の成果は上総層群のみならず,宮崎層群の群集も氷河性海水準変動に同期して消長を繰り返していたことを強く示唆する. ・千葉県の上総層群 1.柿ノ木台層に3枚の凝灰岩層を認め,これらの層準を元に化学合成化石群集の産出ステージをPickering et al.(1999)の酸素同位体比曲線と対比した結果,湧水は温暖化期に活発であったことが確実となった. ・本年度のまとめ 3地点の調査は,湧水が氷河性海水準変動に同期して消長を繰り返し,かつ温暖化期に最も活動的になることを強く示唆している.この成果はメタン湧水の時期とグローバルな変動の同期性を世界で初めて明かにした点で極めて大きな成果と言える.
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