研究概要 |
(1)C隕石の衝撃履歴の解明と衝撃見積もりの確立 (a)無水のアエンデCV3隕石の常温における,5GPaごとの50GPaまでの衝撃実験を行った。そして,回収試料のSEMおよびEPMAによる観察・分析を現在行っている。含水隕石とは大きく異なる衝撃応答を示すことが明らかになりっつある。 (b)含水のマーチソンCM2隕石の5〜50GPaでの衝撃実験回収試料のTEMによる観察・分析を現在行っている。衝撃加熱による鉱物変化の詳細,そして,地球上で回収される塵との類似点,相違点が明らかになりつつある。 (2)小惑星衝突による塵形成メカニズム サーペンティン(含水鉱物)を粉砕した微粒子集合体を含水小惑星の模擬試料とし,開放系(試料を容器に閉じ込めない系)で,合計6回の衝撃実験を行い,現在それら試料の解析を行っている。 (3)コンドライト隕石のケイ酸塩暗色化現象 神戸隕石は特に顕著な暗色化を示すことから,この隕石のケイ酸塩を詳細に調べた。その結果,カンラン石および斜長石が,無数の極微小気泡と包有物を含むことがわかった。これらのケイ酸塩は,隕石が高温(>600℃)に熱せられたときに衝撃を受けてできた溶融物から結晶化したものだと考えられる。 (4)コンドライト隕石の熱変成・水質変成の証拠 熱変成度が少しずつ異なる7つのCO3隕石の,合計783個のコンドリュールを調べた。その結果,コンドリュール中のNaに富むネフェリンは,ガラスや斜長石を交代してできていることがわかった。その交代の度合いは,隕石の熱変成度が高くなるほど増大する傾向があることがわかった。このことは,ネフェリンが隕石母天体中で,水質変成・熱変成に伴って形成されたことを示している。この結果は,これまで無変成と思われていたCO隕石母天体において,水,熱による物質変化の現象があったことを意味している。
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