研究概要 |
(1)含水C隕石の衝撃による加熱履歴の解明と惑星間塵(Micrometeorites)との関係 地球で回収されるMicrometeoritesの大部分は,様々な程度の加熱を受けている。その加熱は,塵が地球大気に突入するときの空気との摩擦によると考えられている。我々は,含水のCM2隕石の圧力5〜50GPaでの衝撃実験回収試料のTEMによる観察・分析を行い,衝撃を受けて加熱され,変化した隕石が,Micrometeoritesと非常によく似ていることを見出しつつある。この結果は,Micrometeoritesの加熱が地球大気に突入する以前に既に起こった可能性を意味しており,これまでのMicrometeoritesの供給源に関する解釈を根本的に覆す可能性がある。 (2)コンドライト隕石のケイ酸塩暗色化現象 ケイ酸塩暗色化を示す神戸隕石およびその他4つのCK隕石の電子顕微鏡による研究を行っている。その結果,特に暗色化の強い4つの隕石から無数の極微小気泡と包有物を含む特異なカンラン石が多く存在することがわかった。この特異なカンラン石は,隕石が高温(>600℃)に熱せられたときに衝撃を受けてできた溶融物から結晶化したものだと考えられる。それゆえ,ケイ酸塩暗色化を示す隕石の母天体は,600℃以上に加熱された状態で衝撃を受けたことが推定される。 (3)エンスタタイトの水熱変成実験:コンドライト隕石の水質変成条件の解明 コンドライト隕石母天体における水質変成条件の解明を目的として,水熱変成装置を用いて,エンスタタイトの様々なpH,温度,時間における変成実験を行っている。その結果,特にpH,温度の変化によって,形成される層状ケイ酸塩の種類,量が大きく異なることがわかってきた。この結果から,隕石母天体において水質変成が起こった温度,またそれに関与した溶液のpHなどが推定可能になりつつある。
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