研究概要 |
(1)輝石の水質変成実験:炭素質コンドライト隕石の水質変成条件の解明 炭素質コンドライトに含まれるエンスタタイトは選択的に含水の層状ケイ酸塩に交代変成されることが知られている。隕石母天体における水質変成条件の解明を目的として,水熱変成装置を用いて,エンスタタイトの様々なpH,温度,時間条件における変成実験を行った。その結果,特にpH,温度の違いによって,生成される層状ケイ酸塩の種類,量が大きく異なることがわかった。この結果から,いろいろな種類の隕石母天体における水質変成に関与した溶液のpH,また変成温度などを具体的に推定することが可能になった。 (2)含水炭素質コンドライトの衝撃加熱履歴の解明と惑星間塵との関係 地球で回収される惑星間塵は様々な程度の加熱を受けている。その加熱は,塵が地球大気に突入するときの空気との摩擦によると考えられている。我々は,含水のCM隕石の衝撃実験回収試料のTEMによる観察・分析を行い,衝撃加熱で変化した隕石が惑星間塵と非常によく似ていることを見出した。惑星間塵の主要な割合は小惑星同志の衝突でできると考えられている。我々の結果は,惑星間塵は,地球大気に突入するときだけでなく,小惑星同志の衝突で形成されるときに既に加熱されている可能性が高いことを意味している。 (3)彗星塵試料の電子顕微鏡分析 NASAのスターダスト探査機が持ち帰った彗星の塵試料(9つ)の分析を,電子顕微鏡を用いて行なった。塵(径数ミクロン程度)は主に10nm〜1μm程度のケイ酸塩微粒子からなり,コンドライト隕石の構成物に似た物質が多く含まれている。カンラン石,輝石の組成は非常に不均質であり,彗星内での加熱の影響はほとんどないことを意味している。カンラン石粒子に高密度のらせん転位を持つものを発見した。このことは,この粒子が27GPa以上の衝撃圧力を受けたことを示しており,彗星が高速度衝突を受けたことを示唆する。
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