研究概要 |
昨年度本科学研究費補助金により導入した元素分析計付きフロー導入型安定同位体比測定用質量分析計の基礎的チェックを終了した。これには,以下のことが含まれる。 1.試料の連続測定における元素分析計カラムの寿命を検討し,50試料程度でカラムの交換が必要であることを確認した。 2.同一試料の繰り返し分析により,測定精度が従来型の安定同位体比測定用質量分析計と同程度である±0.3パーミルであることを確認した。 3.元素分析計における試料の燃焼効率と測定される同位体比の再現性のチェックを様々な硫黄化合物を用いて行い,硫酸塩や硫化物の試料を測定するためには助燃剤(五酸化バナジウム)を用いる必要があることを明らかにした。また,同じ硫黄同位体比を持つ試料を硫酸塩の形と硫化物の形で元素分析計に投入し同位体比を行うことにより,助燃剤を用いれば,どちらの化学形でも同一の硫黄同位体比が得られることを確認した。 4.測定した硫黄同位体比を従来型の質量分析計で用いていた研究室スタンダードを用いて国際標準であるCDTスケールに変換する方法を確立した。 5.測定に用いる最適試料量を検討し,試料として3〜15μgSが適当であることを確認した。この試料量は,従来の試料調整法と従来型質量分析計を用いて測定に供する試料量の百分の一である。 さらに,本研究課題で実際に測定する海底熱水系の沈殿物試料(熱水チムニーや鉱石)を新たに沖縄トラフ伊平屋凹地海底熱水系とマリアナ島弧海底熱水系で採取し,試料の鉱物学的記載を行っている。
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