研究概要 |
硫黄同位体比微量分析は,本研究費により購入したEA-IRMS (IsoPrime-EA)により0.01mgSの試料により分析可能なことが明らかになっていたが,試料形としてBaSO_4を用いた場合にオペレーターに有害でない助燃剤の探索を行った。この結果,Nb_2O_5が硫黄同位体比の再現性が良く助燃剤として適当であることが分かった(未発表)。 海底熱水系熱水および沈殿物の硫黄同位体比測定をマヌス海盆デスモス・カルデラ海底熱水系,マリアナ島弧海底熱水系で行った。酸性の熱水を噴出しているデスモス・カルデラでは硫黄同位体比に対する微生物の影響は見られなかったが,これまで海底熱水系で報告された中で最も低い硫黄同位体比が測定され,その原因が火山ガスとして海水中に注入されたSO_2ガスの不均化反応であることが推定された(Gena et al., 2006)。同様に酸性の熱水と液状硫黄を噴出しているマリアナ島弧のいくつかの海底熱水系でも硫黄同位体比の測定を行い,これまで報告されていた海底熱水系に比べて低い硫黄同位体比が測定され,デスモス・カルデラ海底熱水系と同様にSO_2ガスの不均化反応が硫黄同位体システマチックスに大きな影響を与えていることが分かった(発表準備中)。また,沖縄トラフの伊平屋凹地北部海底熱水系の熱水性沈殿物(活動中の熱水チムニーと活動を停止した硫化物チムニー)について,詳細な鉱物学的記載を行い,チムニーの生成から活動停止に至るまでの硫化物チムニーの生成モデルを構築した(投稿中)。鉱物学的記載の済んだ沖縄トラフの熱水性沈殿物について硫黄同位体比測定を準備中である。
|