研究課題
構造や電子状態が不明な溶液中および固体表面での短寿命金属化学種を対象とし、サブナノ秒までの時間分解能でその場構造解析およびその場電子状態解析を行うための時間分解XAFS実験法の開発を目的として研究を進めている。平成19年度にはこれまでに開発・整備を進めてきたNd:YAGナノ秒パルスレーザーと放射光X線パルスとの同期を取り、高速CCDをキネティックスモードで利用する一次元検出器を組み合わせたポンプープローブ測定システムを確立した。PF-ARでは1.26μs間隔でパルス状の放射光が得られるので、この時間内に行転送が可能なCCD素子を用い、その行転送をPF-ARのバンチ周回信号で駆動する回路を有する高速CCD検出システムを開発した。入射X線はCCD素子に光学カップリングして取り付けたP46蛍光体付きテーパー型ファイバープレートで可視光へ変換して検出した。また、CCD素子上の検出行以外のエリアへ光が入射するのを防ぐためのスリットシステムを導入し、その動作制御部も開発した。この高速CCD検出システムを用いてFeのK吸収端でのスペクトル測定を行った結果、静的なスペクトルとしては通常の角度掃引型での結果と完全に一致し、検出器の直線性が適正で、蛍光体による空間分解能の劣化がないことを確認した。また、キネティックスモードで動作した時のスペクトル測定の結果、1パルスのX線での吸収端近傍構造の検出にも成功し、1.26μsで繰り返されるX線パルスをそのままの時間スケールで約1000本まで測定することが可能な世界最速の一次元検出システムの開発に成功した。但し、P46蛍光体のX線に対する吸収係数が小さいために結果的なS/N比が十分ではなく、高速な蛍光減衰特性を保持しつつ、より高効率でX線を可視光へ変換できる蛍光体の適用が今後の課題であることが明らかになった。
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