研究課題
基盤研究(A)
構造や電子状態が不明な溶液中および固体表面での短寿命金属化学種を対象とし、サブナノ秒までの時間分解能でその場構造解析およびその場電子状態解析を行なうための時間分解XAFS実験法の開発を目的とした。平成16年度にはNW2Aビームラインでの放射光X線パルスとPF-ARリングのRFマスタークロック信号とのジッターを評価し、サブナノ秒での時間分解に十分な13.3psであることを確認した。平成17〜18年度には、XAFSスペクトルとして必要なX線エネルギー領域全体を一度に測定するための分散型XAFS装置に適用する一次元検出器として、通常は二次元検出器として用いられるCCD素子を1行の一次元検出部+残り行の電荷メモリ部として使用することにより、CCD素子上の電荷の行転送を用いて時間分解記録を行うための高速一次元X線検出システムの開発を行った。X線のパルス間隔(1.26μs)以内に行転送が可能な素子としてATMEL社製のTH7888Aを採用し、約800nsでの行転送をRFマスタークロック信号で駆動するための回路およびメモリ部に展開した電荷データをユニポーラ16ビットのADCで読み出す回路の設計と開発を行った。また、短寿命な光励起状態を生み出すための高出力パルスNd : YAGレーザー(POWERLITE 8000)を平成18年度に導入し、平成19年度にかけてナノ秒パルスレーザーと放射光X線パルスとの同期によるポンプープローブ測定システムを確定した。入射X線はCCD素子に光学カップリングして取り付けたP46蛍光体付きテーパー型ファイバープレートで可視光へ変換して検出した。また、CCD素子上の検出行以外のエリアへ光が入射するのを防ぐためのスリットシステムを開発した。この高速CCD検出システムをキネティックスモードで動作した時のスペクトル測定の結果、1パルスのX線での吸収端近傍構造の検出にも成功し、1.26μsで繰り返されるX線パルスをそのままの時間スケールで約1000本まで測定することが可能な世界最速の一次元検出システムの開発に成功した。
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