研究概要 |
これまで水溶液中におけるRu(II)錯体のCr(III)錯体による消光実験を行ってきたが、本年度は溶媒として水-エタノール混合溶媒を用いて消光実験を行い、得られたエネルギー移動速度定数の変化から溶媒分子が出会い錯体の構造に及ぼす影響を分子レベルで明らかにすることを目的として研究を行った。 エタノールの混合比を体積比で20%、40%と上げていき[Ru(bpy)_3]^<2+>(bpy=2,2'-bipyridine)の発光の[Cr(CN)_6]^<3->、[Cr(ox)_3]^<3->、[Cr(mal)_3]^<3->、[Fe(CN)_6]^<3->による消光実験を行った。その結果、[Ru(bpy)_3]^<2+>と[Cr(CN)_6]^<3->からなる出会い錯体は水溶液中においては[Cr(CN)_6]^<3->が[Ru(bpy)_3]^<2+>の3回軸方向から近づき、[Ru(bpy)_3]^<2+>の錯体内に入り込んでいるが、エタノールの比率を上げていくと徐々にそこから出てくることを明らかにした。 また、エタノールの比率を20%に固定して混合配位子錯体[Ru(phen)_<3-n>(bpy)_n]^<2+>(n=0,1,2,3)(phen:1,10-phenanthroline, bpy:2,2'-bipyridine)の発光の[Cr(CN)_6]^<3->,[Cr(ox)_3]^<3->,[Cr(mal)_3]^<3->による消光実験を行った。水溶液中において出会い錯体を形成している間、[Cr(ox)_3]^<3->は[Ru(phen)_<3-n>(bpy)_n]^<2+>の周りに等価に存在しているが、混合溶媒中において、[Cr(ox)_3]^<3->は[Ru(phen)_2(bpy)]^<2+>のエネルギー移動を起こし難い1つしかない配位子bpyの周りに選択的に存在していることを明らかにした。 以上のことから、溶媒分子も出会い錯体の構造に大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。
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