研究課題
光学特性、電気特性、磁気特性等の分子機能を光、電場、磁場、圧力、温度、pHなどの外部情報で制御できる新しい物質群を創生することを目的として研究を行った。対象とした分子は、電子状態が高スピンと低スピン状態間で相互変換するスピンクロスオーバー分子と一つの分子が磁気履歴をもつ単分子磁石、単一次元磁石である。光誘起スピン転移(LIESST)や大きな熱履歴などの性質をもつ新しいスピンクロスオーバー錯体の研究では、これまでにない新しい分子設計に基づき、スピンクロスオーバー現象の本質に迫る実験結果を得ている。(1)イミダゾール含有直鎖上配位子の鉄錯体で一次元集積構造と熱履歴をもつスピンクロスオーバー錯体を合成した。(2)組成式[Fe(H3L)]ClXをもつ一連の三脚型鉄錯体を合成した。塩化物イオンとイミダゾール基間の水素結合が2次元層構造を形成する。層間を埋める陰イオンXの大きさ、形状によりスピン転移挙動は大きく変化し、一段階、二段階スピン転移をはじめとする多様なスピン転移を陰イオンの選択で実現した。さらに高スピンと低スピンが共存する中間段階ではキラリテイが発現した。もともと三脚型鉄錯体は右巻きと左巻きの分子があるが、高スピン状態では右巻き分子の隣に左巻き分子が水素結合で連結して二次元層構造を形成していた。右巻きと左巻きのキラリテイ以外では構造的違いがない。ところが中間状態では、右巻き分子は高スピンのまま、左巻き分子は低スピンへと変化し、光学活性な空間群へと変化した。一方、単分子磁石、単一次元磁石の研究では、希土類の磁気異方性を利用して一次元鎖錯体をいくつか合成した。この分子系の分子修飾により新しい単一次元磁石を模索した。
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