触媒的不斉合成のためのキラルジエン配位子

2004 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16205013
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 林 民生 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00093295)
• キーワード: 触媒的不斉合成 / 共役付加 / ロジウム触媒 / キラルジエン / 有機ホウ素化合物

研究概要

触媒的不斉合成の研究を行うとき不斉配位子の設計・合成が重要課題となる.後周期遷移金属錯体を触媒とする不斉反応には,リン原子や窒素原子を金属への配位点とするものが数多く考案され用いられてきた.軸不斉ビナフチル骨格をもつbinapに代表されるキラルビスホスフィンやホスファイトなどをはじめとしてオキサゾリン骨格を含む窒素配位子など毎年50例以上の不斉配位子が報告され続けている.中にはこれまでの配位子とは異なるユニークな構造をもち新しい機能を示すものもあるが,大部分は従来の不斉配位子の延長上にあり,新規性に乏しい.
本研究では全く前例のない新規な不斉配位子としてキラルな構造をもつジエンを初めて合成し,これがロジウム触媒不斉1,4-付加反応をはじめとするいくつかのロジウム触媒不斉反応の良好な不斉配位子となることを見出した.シクロオクタジエンやノルボルナジエンが後周期遷移金属錯体の良好な配位子となることは良く知られているが,これらに不斉構造を導入して触媒的不斉合成のキラル配位子として用いた例は全くなかった.
キラルなジエンの基本骨格としては,ノルボルナジエンの他,ビシクロ[2.2.2]オクタジエンやビシクロ[3.3.1]ノナジエン骨格をもつものの合成法を確立し,またそれらのロジウム錯体の構造をX線結晶構造解析などにより明らかにした.ロジウム触媒による共役エノン類やイミン類への有機ボロン酸の不斉付加反応では,ジエン配位子は従来のビスホスフィン配位子より高い触媒活性と高い立体選択性を示した.この画期的な成果は触媒的不斉合成分野に新しい研究領域を切り開くものである.

研究成果

• [雑誌論文] Catalytic Asymmetric Arylative Cyclization of Alkynals : Phosphine-Free Rhodium/Diene Complexes as Efficient Catalysts (2005)
  • 著者名/発表者名: 新谷 亮
  • 雑誌名: J. Am. Chem. Soc. 127・1 ページ: 54-55
• [雑誌論文] C_2-Symmetric Bicyclo[3.3.1]nonadienes as a Chiral Ligand for Rhodium-Catalyzed Asymmetric Arylation of N-(4-Nitrobenzenesulfonyl)arylimines. (2005)
  • 著者名/発表者名: 乙丸 裕介
  • 雑誌名: Org. Lett. 7・2 ページ: 307-310
• [雑誌論文] Preparation of C_2-Symmetric Bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene Ligands and Their Use for Rhodium-Catalyzed Asymmetric 1,4-Addition of Arylboronic Acids (2005)
  • 著者名/発表者名: 乙丸 裕介
  • 雑誌名: J. Org. Chem. 70・7(in press)
• [雑誌論文] C_2-Symmetric bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene and bicyclo[3.3.2]deca-2,6-diene. New chiral diene ligands based on 1,5-cyclooctadiene framework (2005)
  • 著者名/発表者名: 乙丸 裕介
  • 雑誌名: Tetrahedron Asymmetry 16(in press)
• [雑誌論文] Chiral Norbomadienes as Efficient Ligands for the Rhodium-Catalyzed Asym-metric 1,4-Addition of Arylboronic Acids to Fumaric and Maleic Compounds (2004)
  • 著者名/発表者名: 新谷 亮
  • 雑誌名: Org. Lett. 6・19 ページ: 3425-3427
• [雑誌論文] C_2-Symmetric Bicyclo[2.2.2]octadienes as Chiral Ligands : Their High Performance in Rhodium-Catalyzed Asymmetric Arylation of N-Tosylarylimines (2004)
  • 著者名/発表者名: 徳永 礼仁
  • 雑誌名: J. Am. Chem. Soc. 126・42 ページ: 13584-13585