| 研究概要 |
構造制御した籠状オリゴシルセスキキサンは、籠構造の各コーナーにあるケイ素原子に有機系置換基を導入することができる、ユニークな有機-無機ハイブリッド型材料として、最近、新しいタイプの機能性材料への応用に注目を集めている。導入された有機系置換基は一般に放射状に面しているため、ここに光・電子機能性クロモフォアを導入すれば、これらのクロモフォアはオリゴシルセスキオキサン骨格の嵩高さとシロキサン結合の非共役性により、立体的にも電子的にも隔離され、凝集や二量化などクロモフォア間に生じる相互作用を抑制できるものと期待できる。本研究では、光電子機能基としてカルバゾールを有する籠状オリゴシルセスキオキサン(POSS-Cz)を合成し、その固体状態での発光特性を評価した。POSS-CzのDSCを測定したところ、1回目の昇温過程では、融解に基づく鋭い吸熱ピークが観測されたのに対し、2回目はガラス転移に基づくベースラインシフトのみが観測された。ガラス状態のPOSS-Czの粉末X線回折測定から、このガラス性固体が非晶質であることが確認できた。POSS-Czの固体状態の発光スペクトルは、溶液状態とほとんどかわらないモノメリックな発光挙動を示した。このことは、中心のPOSS核が剛直であるために、カルバゾール部分が固体状態でも凝集することなく散在していることを意味している(I.Imae, Y.Kawakami, J.Mater.Chem.,15(43),4581-4583(2005))。
また、シロキサン結合を有する多官能性エポキシ化合物をモノマーとして用いたホログラフィック高分子分散液晶は、シロキサン系化合物の有機化合物との非相溶性により、効率よく液晶化合物がシロキサン系ポリマーから排除されるため、高いコントラストを有する回折像を描画することができた。(M.He, Y.H.Cho, N.Kim, Y.Kawakami, Design.Monom.Polym.,8(5),473-486(2005);Y.H.Cho, C.W.Shin, N.Kim, B.K.Kim, Y.Kawakami, Chem.Mater.,17(25),6263-6271(2005).)
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