研究概要 |
1.最近、直径が100-800nmに達するナノサークル構造をとるポリセラン、ポリフルオレンを予備検討により見い出した。従来の鎖状共役高分子とは一線を画する新奇ナノサークル・新奇ナノロッドを中むとするユニークな光・電子・磁気機能が期待できると考え、ナノサークル・ナノロッド分子の(1)重合触媒、重合条件、分離精製条件の確立、(2)環状構造決定法の確立、(3)所望の固体基板・電極上に化学結合によって配列固定化手法の確立、(4)構造、光・電子物性、機能の相関解明と分子設計手法の確立を行う。計画初年度として、ナノサークルポリフルオレンに注力して検討を進めた。 2.2,7-ジブロモフルオレン(市販)から誘導される2,7-ジブロモ-9,9-ジアルキルフルオレンをYamamotoカップリング反応(DMF中,80℃)により、π共役ポリフルオレンを高収率(65-85%)で得た。AFM観察から、種々の長さや異なる分岐位置を持つアルキル基誘導体の中で、isopentyl、n-hexyl、n-heptyl誘導体(数平均分子量5-10万程度)のみが、mica基板上、直径約100-150nm、高さ0.34-0.45nm(フルオレン環のvan der Waals厚み)、平均重合度300-500程度の巨大環状構造の形成を再現性よく確認できた。ポリフルオレンの概ね60-70%が環状構造を、残りの30-40%はドット状構造(恐らく末端基を有する)を与えた。 3.一方、上記以外の長鎖アルキル置換ポリフルオレン誘導体やn-hexyl体の重合時に意図的に末端基導入を計ったポリフルオレン高分子量体では、直径約60-80nm、高さ1.0-1.5nm、ドット状構造のみが観察された。巨大環状構造形成には、9-位のアルキル鎖長が大きく影響していた。 (第85回日本化学会春季年会(神奈川大学、1PA039)にて詳細を発表。)
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