近年の超分子化学の発展により、非共有結合を用いた自発的な集合化による超分子集合体やデンドリマーなどの巨大分子が比較的簡便に得られるようになった。このような超分子集合体における機能に関しては、これまでに活発に研究が行われている。しかし、異なる機能を有する超分子集合体をさらに集合化することでその機能を複合した「超分子複合集合体」を構築した例は世界的にもまだない。一方、地球環境エネルギー問題を解決するために、太陽エネルギー化学エネルギーへの変換法の開発が緊急かつ重要な研究課題となっている。本研究では、水を酸化する超分子光酸化触媒およびプロトンを還元する超分子光還元触媒を開発し、それらをさらに複合化した「超分子複合光触媒」を用いて太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換法を確立することを目的として研究を展開した。これまでに様々なタイプのポルフィリン集合体を光捕集アンテナ系として用い、配位結合、水素結合、π-π相互作用を利用して電手受容性分子と超分子錯体を形成させることができた。配位結合形成のためにはフラーレンなどの電子受容性部位にピリジンを導入した。フラーレンはポルフィリンとの間でπ錯体を形成することができるので、配位結合と合わせることにより、安定な超分子錯体を形成することができる。これらの超分子錯体を光励起すると効率的な光電子移動が起こり、超分子錯体内で電荷分離状態が生成する。この超分子錯体の電荷分離寿命は驚くほど長寿命であり、最長寿命は1.4ミリ秒にも達した。現在さらに超分子光酸化触媒と超分子光還元触媒を超分子担互作用によりお互いを連結して複合化させることにより、太陽光により水から効率的に水素を取り出すことができる太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換法を開発中である。
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