研究概要 |
アミノ酸骨格を有する亜鉛ポルフィリンペプチドオクタマー[P(ZnP)_8]を光捕集アンテナモデルとして用い、電子アクセプターとしてイミダゾール基を有するフラーレン誘導体を用いて超分子集合体を形成させた。ベンゾニトリル中、室温で紫外可視吸収および蛍光スペクトルを検討した結果、[P(ZnP)_8]にフラーレン誘導体を添加すると、亜鉛部位にピリジルもしくはイミダゾール基が軸配位して複数の反応中心を有する超分子錯体が得られた。この超分子錯体において、亜鉛ポルフィリン部位を光励起すると超分子錯体内光誘起電子移動によって電荷分離状態が生じる。その生成はナノ秒過渡吸収スペクトルにより確認できた。その電荷分離寿命は非常に長く、ポルフィリンユニット数の増加とともにより長寿命になった。このようなポルフィリンとフラーレンの超分子錯体はポルフィリンペプチドオリゴマーとC_<60>を混合するだけでも生成する。フリーベースポルフィリンペプチドオリゴマー(P(H_2P)_n : n=1,2,4,8)及び過剰量のフラーレン(C_<60>)のトルエン溶液を用意し、それを三倍体積量のアセトニトリルと混ぜ合わせることにより超分子クラスターが得られた。さらにこの超分子クラスターを酸化スズ透明電極(OTE/SnO_2;OTE : Optically Transparent Electrode)上に500V、2分間電析して、超分子クラスターの酸化スズ電極(OTE/SnO_2/(P(H_2P)_n+C_<60>)_m)を作製した。この光電気化学特性についてはNaI 0.5M及びI_2 0.O1Mのアセトニトリル溶液を電解液とした湿式二極系を用いて検討した。その結果、IPCE(Incident Photon to Photocurrent Efficiency)値はポルフィリンの数が増えるにつれて大きく増加し、可視光領域及び近赤外領域において非常に幅広い光応答が観測された。エネルギー変換効率は、1.3%に達した。さらにより多くのポルフィリンがフラーレンと高次に組織化された集合体が形成できるようにポルフィリンアルカンチオールで修飾された金コロイドを用いるとエネルギー変換効率(η)は1.5%に達した。このような超分子ナノ複合体は今後光電変換材料への応用が期待される。
|