安価な鉄板の一種である電磁鋼板は熱処理によってグレインサイズを最大数メートルにまで巨大化できることが知られている。本提案では、この電磁鋼板上に、ユニバーサル結晶成長という新技術で単結晶半導体シリコンをエピタキシャル成長させ、安価で柔軟な大面積半導体素子を作製することを研究の目的とした。先ず、本提案の構造を実現するために我々が従来使ってきたPLD法に加えパスルスパッタ堆積(PSD)法と呼ばれる新しい結晶成長手法を開発した。PSD法においては、金属原子を間欠的に高いエネルギー状態で供給することによって基板表面での原子拡散を促進し良質な結晶を得ることが可能となる。また、この手法は高スループット条件での大面積結晶成長が得意であり、将来の産業利用への技術移転時に有利である。この手法を用いて絶縁性のAlNバッファー層と導電性のHfNバッファー層の電磁鋼板上へのエピタキシャル成長を試み、極めて品質の高いHfNとAlNがエピタキシャル成長することを確認した。特にHfNバッファー層に関しては成長条件を制御することによって(100)面と(111)面の両者を作り分けることに成功した。さらに、これらのバッファー層上にSi(100)とSi(111)の成長を試み、高品質結晶の成長に成功した。このPSD法によって作製したHfNバッファー層やA!Nバッファー層には電磁鋼板とSiの反応を抑制するバリア効果があり、本構造は結晶成長やデバイス作製工程の高温熱処理に耐えるだけの耐熱性を有している。さらに、これらのSi薄膜を加工することによってショットキー型のダイオード素子を作製し、半導体素子としての動作を確認した。
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