1.液晶性物質のバルクおよび海面における電気特性の評価 棒状、円盤状液晶において電子伝導とともにしばしば観測されるイオン伝度は、キャリアの捕獲、あるいは、直接光イオン化によって生じた不純物イオンの泳動によるもので、本質的には液晶相の示す微視的な相分離構造によって電子伝導チャネルとイオン伝導チャネルか形成されていることがその原因であることを実験的に明らかにした. 従来、電子の伝導が観測されていなかったトリフェニレン誘導体やフタロシアニン誘導体において初めて電子による高速の伝導を確認した. 電荷輸送のモデル化によりイオン伝導の起源を解析的に明らかにするとともに、液晶相における移動度の上限について見積もりを得た. 従来、実験的に見積もりが困難であったスメクティック相の層間での伝導について、TiO_2層をキャリア発生層として利用することにより初めて過渡光電流の測定に成功し、伝導機構は電子伝導であり、移動度は層問距離によって決定されていることを明らかにした. 低分子のネマティック相における伝導機構がイオン伝導によるものであることを初めて実験的に明らかにした. 液晶物質の液晶相を経由して作製される多結晶薄膜は非液晶物質の多結晶薄膜に比べて、欠陥の形成が少なく、数μm以上の多結晶膜においても伝導が維持できることを明らかにした. 電極/液晶物質の界面における電気特性の評価を行い、固体系と同様にSchottky型のエネルギー障壁をもつ注入特性を示すこと、障壁のエネルギーは液晶相に依存することを明らかにした。 2.新物質の合成 ターチオフェンおよびフタロシアニン誘導体を合成し、それぞれ従来の液晶相において最も高い0.1および0.3cm^2/Vsの移動度を実現した. ベンゾチアゾール誘導体を合成し、フェニルナフタレン系液晶物質に比べて、各相において1桁以上高い移動度を確認した.
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