本研究では、液晶物質の有機半導体材料としてデバイスへの応用展開を図るための基盤の構築を目的として、以下に述べる検討課題を掲げ、実験、及び、理論的な基盤に基づく解析を通じて、実証的にその答えを得るために研究を実施した。 (1)分子配向と化学構造はどのように移動度に影響を与えるのか? (2)液晶性物質の電荷輸送特性はどのような物理的基盤に立って理解できるか? (3)移動度の理論的、及び、実際的な限界はどこにあるのか? (4)高い移動度、および、デバイスへ応用するために実用上必要な特性をもつ材料の設計指針は何か? (5)電極界面の特性はどのように理解し、制御できるのか? その結果、棒状および円盤状液晶の液晶相における電荷輸送特性について、棒状液晶では基本的に移動度は層内の分子の分子配向の秩序化に伴う分子間距離の縮小、円盤状液晶の場合ではカラム内の分子の配向揺らぎによって支配されること、化学構造との相関については最終的な結論を得るにはデータの蓄積がまだ十分ではないが、液晶分子のπ-電子共役系のサイズ、ダイポールの大きさにより影響が見られること、電荷輸送特性は基本的に40〜60meV程度の狭い分布幅を持つガウス型に分布した局在準位間での1次元、2次元のホッピング伝導によって記述でき、これから液晶相における最高到達移動度は0.1〜1cm^2/Vsと見積もられること、電極界面の電気特性は基本的に固体系の特性と類似しておりSchottky型の注入障壁によって律速され、電極表面の化学修飾によってある程度制御可能であること、また、液晶相における分子配向を利用することにより多結晶薄膜の作製の際に粒界の形成方向を制御でき、TFTなどのデバイス作製に有効であること等を明らかにした。詳細は報告書に詳しい。
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