本研究では、イオン液体およびイオンゲルの機能化に関し、以下の3点に絞り研究を展開している。 (1)イオン液体およびイオンゲル中のイオンダイナミックスの解明 (2)非水条件下、100℃以上の温度域で安定なプロトン伝導性イオン液体とそのイオンゲルの創製 (3)イオンと電子の両者が可動な混合伝導性イオン性液体とそのイオンゲルの創製 すなわちイオン液体とイオンゲルの導電機構を明らかにすると同時に、これにプロトン伝導性、混合伝導性といった機能を作り込む化学の開拓を目的としている。 平成17年度は、イオン液体、イオンゲル中のイオンダイナミックスの解析に比重を移して検討を重ねた。特に、イオンとポリマーのダイミックスの相関をCoupling/Decouplingの概念で整理し、さらにイオン液体中とイオンゲル中のイオン間相互作用の相違を明らかにした。すなわち、種々のモノマーから網目状高分子をイオン液体中で作成し、その重合反応の可否さらに生成した網目状高分子とイオン液体の相溶性を熱分析、動的粘弾性、光散乱測定などから明らかにした。イオン液体と網目高分子の相溶系であるイオンゲルの導電率を測定し、その温度依存性をVTF式にフィッティングして得られるイオン移動凍結温度(T_o)とT_gの比較、さらにT_gにおけるイオン導電率(□__・T_g))の組成依存性の検討から、イオンゲル中のイオン輸送と高分子鎖ダイナミックスの関係を整理したところ、高分子鎖の分子運動とはDecouplingしたイオン輸送が起きることを見出した。また、磁場勾配NMR法からイオンゲル中のイオン拡散係数からNernst-Einsteinの関係を用いて算出される導電率と、実測の導電率を比較することにより、イオン液体中よりイオンゲル中でイオン活量(イオン解離度)が高くなっていることを見出した。
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