研究概要 |
本研究においては,宇宙用・地上用の各種太陽電池の高効率化・長寿命化を図ることを目的とし,変換効率を低下させる原因となる欠陥の電子的性質・試料内分布状況を精密に評価することのできる,ルミネッセンスを利用した新しい診断技術を開発した. 当研究室が有していたフォトルミネッセンス(PL)スペクトル測定装置を基礎に,分光器.光検出器そして光学系に改良を加え2桁以上の高感度化を実現させた.また既有のフォトルミネッセンス(PL)ウエハーマッピング装置に選択励起PL法およびエレクトロルミネッセンス法の機能を付加し,多接合(MJ)セル,窓層・バッファ層を持つCu(In,Ga)Se_2(CIGS)系セル,そして地上用太陽電池材料の最大シェアを占める多結晶Siの評価を行った.これらの研究により宇宙用のSi太陽電池,MJセル,そしてCIGSセルにおける放射線照射誘起欠陥を初めとする各種欠陥の正体,発生原因,熱処理挙動に対し極めて有益な知見を得ることができた.また多結晶Si太陽電池の変換効率に直結する欠陥の実体を明確に突き止めることができた. 以上により得られた知見を基に,測定時間の革新的な短縮を図るPLイメージング法を開発した.とくにシリコン太陽電池に対しては「弗酸水溶液浸PLイメージング法」を発明した.この手法は,一般に用いられている少数キャリヤ拡散長測定法等と比較して,基板1枚あたりの評価時間を1/1000以下の1秒以下に短縮し,空間分解能も10倍以上向上させた画期的な技術であり,基板内のミクロンサイズの欠陥像が鮮明に得られることを実証した.本手法は,製造ラインに組み込み可能な革新的な実用化技術であるばかりでなく,表面の影響を受けることなく正確に基板結晶内の欠陥分布を捉えることを実現させた学術的価値の高いものであり,応用物理学に与えるインパクトは極めて大きいと確信する.
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