研究課題
1.量子ホール系カンチレバーを用いたエネルギー散逸メソスコピックなピエゾ電圧を用いて、極めて小さなエネルギー散逸でカンチレバーの変位を検出する手法を新しく確立し、量子ホール系において電子のエネルギー散逸が強く抑制されることを、直接確認することに成功した。この結果は、単に量子低次元系における電子のエネルギー散逸を評価する手法を確立したのみならず、レーザー冷却と同様に、カンチレバーの温度を機械的に制御する手法に発展できる可能性を示しており、今後、あらゆる半導体低次元構造の物性研究へ応用が期待される。2.磁性半導体における強磁性発現ダイナミクスのマイクロ機械的解明希薄磁性半導体は、磁性を電気的に制御できる可能性から、非常に多くの研究が進められている。この強磁性発現メカニズムについては不明な部分が多く、現在においても活発な議論が絶えない。今回、ピエゾ抵抗カンチレバーを用いて、歪に対する強磁性発現のレスポンスを調べることにより、強磁性相関が生じる時間スケールを実験的に求めることに成功した。これまで強磁性のダイナミクスについては殆ど報告がなく、強磁性発現メカニズムを解明する有力な手法となるばかりでなく、強磁性体を用いたメカニカル系は、少数系スピンセンサーとしても期待される。3.レーザーによる共振器の機械的特性の制御マイクロ-ナノ機械系の応用の最も大きなものの一つとして微小信号の検出があるが、そのパフォーマンスを決定する機械的特性として、共振器のQ値が重要である。今回、化合物半導体のQ値が、外部から照射するレーザーによって大きく変調できることが確認された。昨今、カンチレバーのレーザー冷却が関連分野で関心を集めており、本結果は化合物半導体光デバイスと組み合わせることにより、オンチップで機械系の冷却を行うことのできる可能性を示している。
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