研究課題
今期得られた最も主要な成果のひとつは、オンチップでパラメトリック励振が可能なマイクロ機械共振器を化合物半導体ヘテロ構造を用いて実現したことである。このパラメトリック共振器を用いてパラメトロン計算機としての応用を提案し、1ビット操作をデモンストレーションすることに成功した。この成果により、超低消費電力のロジック系を実現できる可能性を示した。また、この共振器を用いて、機械振動のパラメトリック増幅を実現することにも成功した。また、光による機械共振器のダンピング制御の実現にも成功した。従来、外部の光共振器と組み込むことによりダンピングを制御する手法は報告されてきたが、本手法では半導体の特性を用いることにより、キャリア励起による圧電効果を用いてダンピング制御が可能である。外部キャビティーを用いた場合に比較し、小型化・集積化に適した振動制御技術である。ダンピング制御は増減両方が可能であり、実効的なダンピングを負の値にまで減少させることにより、カンチレバーの自励振動を引き起こすことにも成功した。さらに、機械共振器の共振特性を改善する新しい手法として、ヘテロ接合構造の形成によって発生した格子不整合歪を用い、共振周波数にして2.5-4倍、Q値にして一桁近い向上を確認した。この手法は組成の制御により格子不整合歪を自在に制御することができるため、汎用性の高い機械共振器の特性改善の手法として期待される。その他、微小エレクトロメカニカル構造を作成・評価するための基盤技術として、ナノワイヤーの成長技術、ならびにSEMによる機械振動評価技術、ナノプローブによる微細構造の評価技術、ブロックコポリマーによるナノ加工技術、レジストを用いたナノメカニカル構造の作製技術などに進展を見た。
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