現在のところ不可能とされているサブサイクルに突入する光電場波束を発生させるためには、これまで可視から近赤外に限られていた液晶(LC型)の空間光位相変調器(SLM)の超広帯域化が必須である。本年度はこのことに注目して、LCの材料にもどって検討し直した結果、紫外域まで透明な(260-1100nmで80-90%の透過率)新しいLCを見いだした。これを用いて1ピクセルSLM、648ピクセルSLM(縦1チャンネルと2チャンネルの2種類の面型SLM)を試作した。この試作SLMの位相変調特性(印可電圧、パルス電圧周期、電圧パルス幅、波長をパラメータにして)および時間応答特性などをチャンネルスペクトル法により測定した。その結果、2オクターブの超広帯域に渡って、チャープ補償器として十分利用できる性能を有していることがわかった。これは紫外域に吸収のある生体分子のコヒーレント制御のための光パルス波形整形器、短波長半導体レーザーの波面制御器、フェムト秒パルス3次元立体加工器にとっても応用可能な、インパクトの大きい光デバイスとなる。 また、この新SLMを利用する際に重要な物理量である、フェムト秒光パルスダメージしきい値を測定した。その結果、800nm、30fs、1kHzくり返しパルスに対しては29GW/cm^2以上、394nm、30fs、1kHzくり返しパルスに対しては1.3GW/cm^2以上であることがわかった。これはこれまでのSLMと同程度である。
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