研究概要 |
昨年度まで,組成の異なる1.55ミクロン帯と1.3ミクロン帯のGaInAsP半導体を直接接合させたアクティブ/パッシブ集積型フォトニック結晶スラブを実証してきた.本年度はアクティブ領域に形成した線欠陥レーザとパッシブ領域に形成した導波路の直接結合系で光励起に対して20%,同様に点欠陥レーザ/導波路エバネセント結合系で4%の外部微分量子効率を測定した.これまでフォトニック結晶微小レーザでは効率が定量的に評価された例は本科研研究以外では報告されておらず,当然,この値が世界最高記録である.値を制限しているのは評価系との光結合損失であり,特に後者ではその影響が大きい.この影響を差し引くと60%以上の効率が得られるものと考えられ,実用性の高い値がこのような微小レーザにおいて初めて評価された.また昨年までは,しきい値が低い点欠陥レーザのみで室温連続動作が得られていたが,本年度,利得を高める最適設計により線欠陥レーザにおいてもこれを実現した.同結合系を半導体光増幅器に応用する研究では,光の群速度が低下するフォトニックバンド端において入射光の群遅延時間が長くなること,それにより電子との相互作用が増大し,光励起時に出力強度が増大することを観測した.また光励起型デバイスと電流注入型デバイスを作製し,いずれにおいてもバンド端での光利得の増大効果を初めて実証した.ただし光増幅器に利用した深い孔をもつフォトニック結晶では,孔の深さの不足や側壁の傾斜に起因した基板への放射損失が大きく,結果として正味の利得には到達しなかった.ただし10〜20ミクロンという短い長さで15dB以上の消光比を与えるゲートデバイスでとしては機能することを確認した.以上,半導体光集積技術を用いたフォトニック結晶集積デバイスの可能性を示すことができた.
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