研究概要 |
本研究は,ナノテクノロジーを基盤技術として開発するナノ・メガシステムを対象とし,これらの信頼性を支配するナノメートルオーダーの材料強度物性のゆらぎ分布を,実構造サイズレベルで測定する技術を開発することを目的としている. 平成17年度は,ナノ・メガシステムの強度物性ゆらぎマップ測定システムの基本技術を完成させた.試験片のナノ領域(変位分解能:0.01nm)の強度物性を,隣接した多点間で連続して測定する計測システムを完成させた.ナノポジショニング技術を応用した試料移動ステージを使用し,さらに,ナノインデンテーション技術の高機能化を目的としてダイナミックコンタクトモジュール(荷重分解能:1nN)を導入した.この測定の空間分解能向上には,複数の角度センサを使用した高精度搬送システムを試作し,試料移動用ステージとして使用している.これにより,ナノスケールでの強度物性ゆらぎマップ測定を実現した.実際に半導体薄膜配線用銅めっき膜の強度物性が数100nm周期で数倍以上異なる分布を有し,バルク特性から大きく異なることを実証した. さらに,材料表面の微細組織変化を観察できるマルチチャンネル分光器(検出器)を導入し,高温ガスタービン用Ni基超合金のナノメートル分散組織がクリープ損傷の進行に伴い大きく変化することをIn-situ観察する技術も開発し,強度物性分布の変化も実証した. 本測定システムにより,本研究の目標である数mmから数十cmの実構造物の表面において,ナノメートルオーダーの分解能(位置再現分解能:20nm)で測定対象領域を特定し,最小位置分解能100nm以下で材料表面の強度物性(弾性率,硬度,降伏応力,残留応力,界面接着強度等)のゆらぎ分布マップを,ナノインデンテーション技術を用いて最小変位分解能0.2pm,荷重分解能1nN単位で測定する技術を完成させた.
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