研究概要 |
本研究は,ナノテクノロジーを基盤技術として開発するナノ・メガシステムを対象とし,これらの信頼性を支配するナノメートルオーダーの材料強度物性のゆらぎ分布を測定する技術を開発することを目的としている. 平成18年度は,17年度までに開発したナノ・メガシステムの強度物性ゆらぎマップ測定システムを活用し,次世代半導体用微細薄膜配線材料,高誘電率薄膜材料,次世代高温ガスタービン動翼材料等のナノスケール結晶構造,組織変化に基づく各種物性変動メカニズムの解明研究を推進した.その結果,薄膜配線材料においては,ナノスケールの柱状組織が形成されることで,機械特性(弾性率や破壊強度等)に強い三次元異方性が発現するとともに,ナノスケールで複雑な三次元分布が形成されることを実証した.また,高誘電率薄膜材料においては,原子レベルでの欠損に基づき,局所的な著しいバンドギャップ低減が発生し,絶縁特性の低下とともに,点欠陥の拡散に基づく大きな経時変化が生じることを解析的に明らかにした.これらの解析結果を,(財)高輝度光科学研究センター(SPring-8)内の光電子分光分析設備を活用して実証した.さらに,次世代高温ガスタービン向け耐熱合金において,高温高応力負荷環境でナノスケールの微細分散組織が構成原子の応力起因の異方的拡散挙動に起因して粗大化層状化し,急激に高温強度が劣化する現象の大気中可視化を実現し,その劣化損傷メカニズムを明らかにした. 以上の研究から,本研究の当初目標であった,「ナノメートルオーダーの分解能(位置再現分解能:20nm)で測定対象領域を特定し,最小位置分解能100nm以下で材料表面の強度物性(弾性率,硬度,降伏応力,残留応力,界面接着強度等)のゆらぎ分布マップを,最小変位分解能0.2pm,荷重分解能1nN単位で測定する技術」を完成するとともに,その有用性を実証した.
|