研究概要 |
(1)高感度二次元検出器(PSPC)を搭載した高輝度X線発生装置に,キャピラリを組み合わせ直径50μmの高輝度細束X線(MBX)を実現させた.また,このMBXを用いて,微小領域の応力値を測定することに成功した.現在,負荷その場測定のための冶具の設計を完了した. (2)銅薄膜の熱サイクルおよび熱履歴によるヒロックおよびボイドなどの損傷を原子間力顕微鏡(AFM)を使用して定量化を行った.さらに,放射光を利用して熱サイクル中の内部応力のその場測定に成功し,その内部応力の挙動が,熱膨張係数の違いによる変形,高温での塑性変形およびクリープ変形から予測されことを明らかにした. (3)めっき法で製作した銅薄膜の疲労試験を行い手法の開発に成功した.これを用いて疲労試験を行い,S-N関係に及ぼす膜厚および結晶粒径の影響を検討した.粒径が小さいほうが長寿命となった. (4)ポリイミド基板上に蒸着したCu薄膜の試験片を用いて,通常のX線法で引っ張り試験を行い,膜中の応力を実測することから基材接着した状態での薄膜特性を実測することが出来た. (5)結晶学的観点から微小疲労き裂の発生・成長過程を観察する手段として,AFMとともに結晶の方位を測定するために電子線後方散乱(EBSD)法を併用する手法が有効であることを,超細粒鋼に対して実証し,微小疲労き裂の分岐の条件を結晶学的に明らかにした. (6)EBSDの手法は結晶方位のほか結晶粒内でのミスオリエンテーションを計測することが可能であり,この手法により多結晶の変形における結晶粒界の拘束の効果を抽出することに成功した.また、このミスオリエンテーションの計測は,細束X線法によるミスオリエンテーションの計測結果とよく対応した. (7)多軸応力を受ける場合の微小な疲労き裂の進展経路を予測する手法として,き裂先端近傍の接線応力基準を基にして,き裂の閉口を考慮した境界要素法が有力であることを示した.
|