研究概要 |
宇宙機器のための新しい潤滑法として世界で初めて提案している「超高真空中トライボコーティング法(摩擦支援型蒸着膜形成法)を用いた自己修復軸受(摩擦状態の自己診断に基づく自己修復機能を有するマイクロヒータとマイクロセンサーを内蔵した玉軸受)の開発を最終目的とする本研究において,最終年の本年は,超低摩擦を発生させるためのトライボコーティング膜形成のための指針を明らかにした.得られた主要な結果は以下の通りである. 1.窒化ケイ素球表面に形成されるトライボコーティング膜の構造により,摩擦係数は0.03から0.5まで変化することを示した. 2.SUS440Cに存在するCr, Si_3N_4に存在するSi,潤滑剤として供給されるIn及びSUS440CまたはSi_3N_4表面に存在する0により構成される30・m程度のドーム状の形状を有するトライボコーティング膜が窒化ケイ素球の摩耗痕全体に形成される時,0.07以下の摩擦係数を示す. 3.潤滑剤として蒸着されるInは,トライボコーティング膜の構成要素として低摩擦の発生に寄与するのみならず,トライボコーティング膜として取り込まれるSUS440C表面に存在する不動態被膜(クロムの酸化被膜)の量を制御する役割を有する. 4.SUS440Cディスクの不動態被膜の厚さが,トライボコーティング膜の構造に影響を与えることを示した. 5.同条件下のトライボコーティングを施した2種類のSUS440Cディスクにおいて観察される異なるトライボコーティング膜の構造は,SUS440Cディスクの硬さ,粒径,Inに対するぬれ性では説明し得ないことを示した.
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