研究概要 |
宇宙機器のための全く新しい潤滑法として世界で初めて提案している「超高真空中トライボコーティング法(摩擦支援型蒸着膜形成法)を用いた自己修復軸受(摩擦状態の自己診断に基づく自己修復機能を有するマイクロヒータとマイクロセンサーを内蔵した玉軸受)の開発を最終目的とし,以下2点につき研究を遂行した. 1.低消費電力(1W以下)かつ小型(1mm以下)トライボコーティング潤滑システムを実現するためのマイクロヒータの開発 2.インジウムのトライボコーティングによる低摩擦発生機構の解明 具体的な研究成果は以下の通りである. 1.シリコン基板上に潤滑剤であるインジウムを搭載した世界最小のマイクロ蒸着源(MES : Micro Evaporation Source)の開発に成功した.開発したMESは,非常に小さい電力560mWで,トライボコーティングが可能であることを実証した. 2.10^<-6>Paの超高真空中において500x500μmのサイズのMESを用いて供給膜厚10nm(800℃,30sec)のトライボコーティングを玉軸受に施すことで,0.005の低摩擦係数が得られることを実証した. 3.0.03以下の得られるトライボコーティング膜はシリカと酸素を多く含んだアモルファス構造をしており,その中に数ナノメートルサイズのインジウムが分散したナノメートルオーダの複合材料の構造を有していることを明らかにした. 4.トライボコーティング膜内に含まれる数ナノメートルオーダのインジウムが溶融することによってトライボコーティング膜表面に極めて薄い潤滑膜が形成され,破断してもすぐに修復されるために従来の固体潤滑では不可能な低摩擦係数が発現することを示した.
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