研究課題
基盤研究(A)
カーボンナノチューブを中枢材料とする先進炭素材料はナノマシンやマイクロマシン、次世代高密度磁気記録、バイオナノなどの分野への応用が期待されている。運動や情報を正確に伝達するためにはナノトライボロジー特性を明らかにする必要があるので、カーボンナノチューブやオニオンライクカーボンなどの炭素材料を対象に超高真空および大気中で作動する原子間力顕微鏡を用いて研究を行った。カーボンナノチューブはマイクロニュートンの接触力では凝着ゼロ、1を越える超高摩擦係数、相手材料の曲率半径、硬さに依存せず、すべり速度の影響もなく、摩耗ゼロという極めて特徴的なトライボロジー特性を示すことがわかった。このような特徴を有するトライボロジー材料は現在まで報告が全くなされていない。さらにミリニュートンオーダーの接触力では、10^<-1>の摩擦係数を示したが、これはカーボンナノチューブがシート状のグラファイトに変化することに起因することを明らかにした。ニュー・トンオーダーの接触力では10^<-2>の摩擦係数へと減少し、この傾向は基油に混合することで著しい効果を示した。この場合も摩擦過程中におけるカーボンナノチューブの自己組織化が原因となっていることを高分解能透過電子顕微鏡によって明らかにした。オニオンライクカーボンは超高真空中および基油中で超低摩擦を示し、固体潤滑剤として有望であることが判った。フラーレンC_<60>はナノニュートンの接触料では比較的マイルドな摩擦形態をとるが、ミリニュートン以上の接触力では運動をストップさせるほどの高摩擦を示した。従って本研究により、先進炭素材料の組み合わせで円滑なすべり運動と停止機能とを設計することが可能であることを示すことができた。また、単一のカーボンナノチューブとグラファイトとのナノニュートンの接触荷重領域において、ファンデルワールス力とπ-π*結合の力とを分離して考察できる可能性を示した。
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