超音波による熱乱流の速度場計測法を確立するとともに、熱乱流における熱輸送法則とそれを決定付けている境界層の構造を明らかにすることが本研究の主要な目的である。そのため、18年度は以下の研究を行い、所定の成果を得た。 1.超音波ドプラー法が乱流速度場の計測に用いられた例は殆どなく、熱乱流に適用した我々の実験が最初の実験であった。超音波による速度場計測の正しさを定量的に明らかにするため、PIV(粒子画像速度計)法と超音波計測を水の熱対流系に同時に適用し、両者の比較を行った。その結果、両者は定量的によく一致することを確かめた。また、超音波法では、散乱体の密度が重要であり、エコー取得率が90%を越える条件で両測定の相関が0.9を超えることを明らかにした。 2.境界層内の構造を明らかにするため、境界面に沿ったx軸、y軸方向の速度場の同時計測を行った。その結果、境界層内を伝播する孤立波状の励起構造や、平均流ロールの回転に伴うと見られるx-y面内の速度場の回転が観測された。以上の実験事実からアスペクト比0.5の場合の乱流中の平均流は、長く傾いたロール構造をとっており、時間とともに回転や上下動などの変動を伴っていると推測された。 3.さらに多数の超音波トランスデューサーを同時に用いて、3次元の速度場計測を実現し、乱流構造を明らかにするため、セルの外部から超音波トランスデューサーをあて、自動ステージを移動させながらセル全体をスキャンする新しい計測方法の開発した。セル容器の壁での反射を最小にするため音響インピーダンスのマッチングを最適化し、ビームの形状を整形するため、超音波トランスデューサーを自作して実験を行った。 4.平均流の反転現象や長時間のダイナミクスを計測するため、対流容器の側壁と底面に埋め込み穴を多数開け、32個のサーミスターにより温度分布の測定を行い、平均流の構造を予測する方法の開発に着手した。
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