研究概要 |
今年度は以下の成果を得た。 1.乱流,乱流間転移におけるDirectedPercolationの実験的検証 吸収状態がある系の相転移は,Directed Percolation(DP)と呼ばれ,非平衡系における相転移の普遍的なクラスとして知られており,物理,化学,生物等多くの分野で理論的研究が行われてきた。しかし,DP転移の実験による十分な検証は存在しなかった。我々は,液晶中に生じる乱流,乱流転移の間欠性に着目し,従来謎とされてきたヒステリシス転移がDP転移と関わっていることを見出し,従来に比べ格段にシステムサイズが大きく統計性の高い実験を行い,3つの臨界指数すべてが高精度でDPクラスの指数に一致することを始めて示し,DP転移が現実に存在することを実証した。これまで理論的には多くの研究が存在したが3っの臨界指数が-致する実験は存在せず,実験系との対応に疑問が持たれていたが,この実験によりDPが自然界に存在することが示された。 2.熱乱流中の巨視的平均流の反転現象 高レーリー数の発達した熱乱流中に巨視的平均流が発生し,乱流中に巨視的ロール構造が形成されることは,我々が過去に見出した現象であり,これまで多数の研究が行われてきたが,低プラントル数の流体に関する実験データは殆ど存在しない。液体金属などの低プラント数流体は,地球内部のコアの対流によるダイナモ効果と深い関係があり,対流ロールの反転と地球磁場の反転は密接に関係していると考えられている。その意味で平均流の反転メカニズムと反転周期の統計則には大きな興味がもたれている。これらの問題に実験からアプローチするため,水銀熱対流内の平均流の長時間振る舞いを測定する方法として,超音波ドプラー法と容器に埋め込んだ32個のサーミスターによる温度の空間分布の測定を併用する方法を開発した。その結果,速度プロファイルでの反転と温度プロファイルから推定された反転には強い相関があることが明らかとなり,1ヶ月以上の長時間自動計測が可能となった。それらにより,反転時間間隔がほぼ指数分布に従うことが明らかとなった。(論文投稿準備中)
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