研究概要 |
本年度は、報告者らが既に開発している、市販のナノ粒子(CuO,アルミナ,炭素ナノチューブ)を酸やアルカリを用いて金属表面(Cu,Al,ステンレス)にエッチングさせながら付着させる方法により、界面に様々な数十ナノーメートルからサブマイクロメートルの界面粗さをつけてその形態を本研究で購入したリアルサーフェースビュー顕微鏡により観察し、伝熱比較実験で得られた伝熱特性と界面形態との関連を調べた。その結果、100nmオーダの空隙が重要であることが推察された。微視的な観点から考察すると、表面にナノスケールからマイクロスケールの粗さをもったポーラス構造が数マイクロメートル以内の厚さで形成されるため、界面の表面積が増加して境界層中の熱伝導層の温度分布が変化したことが原因と考えられる。 そこで、ナノ・ミクロ伝熱流動計測水路を購入・改良し、層流状態における強制対流伝熱実験を行った。実験装置は、平行平板型流路と水循環ポンプ及び加熱冷却系および流体温度計測系から構成されている。実験流路(長さ50cm×幅5cm×高さ5mm)は水平置きであり、流路上壁にナノ粒子多孔質伝熱面と通常の平滑金属伝熱面をそれぞれ用いた場合について、レイノルズ数800〜1100程度、熱境界条件としては、上面をラバーヒータで一定温度に制御し、下面を恒温槽で一定温度に冷却した実験を行った。測定した流体温度分布から、ナノ・ミクロ多孔質伝熱面の方が壁面での温度勾配、つまり、壁面熱流束が大きいことが推測されるが、壁面近傍(0.5mm以内)の流体層の温度分布を計測していないため、本年度は明確な結論には至れなかった。現在、25ミクロン径の極細熱電対での実験を計画している。 また、分子動力学によるミクロスケールでの伝熱機構の検討を行い、界面に接する流体の流動特性(特に、界面分子の拡散挙動)が大きな役割を果たしていることを明らかにした。
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